低 温 物 理 学 研 究 室

教授 水崎 隆雄 220号室 753-3785
助教授 松原 明* 221号室 753-3755
助教授 佐々木 豊* 221号室 753-3755
* 低温物質科学研究センター
低温物理学研究室のHomePageへ

高温では熱的擾乱によって隠されている物質固有の性質が温度を下げることによって現われるので、 低温物理学は物性物理の基礎的研究として重要であり、研究対象も物性物理全体をカバーしている。 低温物理学研究室は希釈冷凍機(1K-10mKの温度域)5台が稼働し、 内2台には核スピン断熱消磁冷凍機が取り付けられ、極低温度(大体4K以下を言う)から 超低温度域(10mK-100μK)での実験が可能である。 主な研究テーマは超低温における量子凝縮系(固体、液体ヘリウム及び偏極原子状水素気体)の研究である。
液体ヘリウムは常圧では絶対零度でも固体にならず量子液体といわれるが、 加圧下で存在する固体ヘリウムも通常の固体と異なり原子が格子点に局在せず位置を激しく交換している固体であり、 量子固体と言われる。水素は通常分子状態で存在するが、偏極原子状水素は、 低温で水素分子を解離させ強磁場下でスピン偏極させて分子への再結合を防ぎ安定化させたものである。 偏極原子状水素は量子性が最も大きいので絶対零度でも気体状態である。 これらを総称して量子凝縮系というが、これらはいずれも最も簡単な系であり、 物理学の基礎的な問題を研究する上で極めて重要な位置を占めるものである。 また低温では量子統計性が重要になり、他の通常の凝縮系では見られない量子凝縮系特有 の興味深い現象も出現する。

  1. 固体ヘリウム−3の核磁気秩序相の研究: 量子固体ヘリウム中の原子は上述したように格子点に局在せずに互いに位置を交換しているので、 核スピンの間に大きな交換相互作用が働き1mKで反強磁性に核スピンが整列する。 固体ヘリウム−3の核整列相の出現は他の物質では例がない興味深い現象であり、 また磁性の基礎研究として特に重要である。現在多くの精密な実験がなされ、 理論的にも第一原理からの研究が進んでいる。 NMRと超音波を用いて核スピンが整列した固体の核スピンの動力学の問題を研究する。

  2. 偏極原子状水素の研究: 電子スピンが偏極した水素原子は絶対零度においても気体状態である(液体や固体にならない)。 高密度の気体を超低温に冷却出来れば、ボーズ凝縮することが期待され、 世界の2、3の研究所で精力的に研究が進められている。 偏極水素の安定化と冷却の問題を研究し、特に超流動ヘリウムの表面に吸着された2次元偏極水素の超流動転移の探索を試みる。 絶対零度の気体という特性を利用して、極低温で弱く相互作用している気体の輸送現象を調べ、ミクロな理論の検証を行う。 フェルミ気体である重水素気体についても研究する。

  3. 超流動ヘリウム3の研究: 超流動ヘリウム3はp波の超流体であり、内部自由度を持つため、多彩な超流動状態が存在する。 回転超流動冷凍機を用いての回転する超流動3Heの量子流体力学(量子渦のダイナミクス等)を研究する。 また、エアロジェルという空孔率が95%を越える物質中に入れた時のp波の超流動への不純物効果を研究する。

  4. ヘリウムの応用的研究: ヘリウムの特性(試料が純粋で精密実験が可能。超流動という巨視的凝縮状態の出現。 統計性の異なる4Heと3Heの2種類の多体系が存在することなど)を生かした基礎物性の研究を行う。 超流動ヘリウム中の固体ヘリウム結晶成長、1次相転移のダイナミクスと巨視的トンネル現象の探索や磁気共鳴映像法(MRI)顕微鏡の開発と量子凝縮系のマクロな時期構造の実験などを行う。