超低温におけるHe中の1次相転移のダイナミクスと巨視的量子トンネル現象の検証


 一次相転移に際してはエネルギーバリアーが伴うので、多くの場合過冷却を起こし、 熱的揺らぎによってこのエネルギーバリアーを乗り越えることによって一次相転移が起こると信じられているが、 詳細な機構はまったく分かっていない。 量子凝縮系では液体−気体、液体−固体、混合液の相分離など多くの一次相転移が絶対零度近傍で起こる。 熱的揺らぎの小さい超低温では一次相転移が巨視的量子トンネル効果(Macroscipic QuantunTunneling−MQT)によって 起こることがYu. Kaganによって理論的に予言され、量子凝縮系を用いた超流動He中の固体核形成、 負圧液体Heでのキャビテーション、3He-4He混合液の相分離などの一次相転移が研究されている。
 本研究では局所的な高電場を一定時間の間(10 msecから10 secまで4桁可変)液体4Heに印下し、 大きな過冷却状態の超流動4He中に作り出し、そこでの固体結晶が生成する確率を過冷却度および温度の関数として測定した。 1K よりも十分低温では固体核生成確率は温度に依存しなくなり、 量子トンネル効果による生成機構によって起こったものと思われる。しかしながら観測された生成確率は、 MQT機構による均一核生成理論(homogeneous nucleation theory)で予想されるものよりも桁違いに大きかった。 この問題点に対して、固体核生成過程を試料壁に既に微少な固体(臨界サイズよりも大きい)が存在すると仮定し、 それがある種の機構でピンされており、過冷却状態が進むに従ってピンニング・ポテンシャル・バリアーを トンネルするというモデル(heterogeneous nucleation)を提案した。


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