磁気共鳴映像法 (MRI)による超低温量子凝縮系の磁気構造と動的現象



 超低温での量子凝縮系の空間磁気構造の研究に適用可能なMRIの技術を開発した。超低温での3Heの特徴(S/Nが非常に良いことと共鳴線幅が量子効果による交換相互作用のmotional narrowingの効果を受けて非常に狭いこと)を利用して高解像度なMRI測定ができる。
 開発段階では希釈冷凍機で得られる数10mK温度域での3He−4He混合液の相分離界面の形状を映像化した。この予備的実験で得られた2次元画像の空間分解能は数10μm(境界面の2次元の位置分解能は約1μmである)である。混合液の相分離界面の形状の解析から界面張力と界面と試料壁の接触角度の温度依存性を求めることが出来た。混合液の3重点(相分離曲線と超流動転移点が交わる点で870 mK)に近づくにつれて界面張力はゼロに近づき、その温度依存性は報告されている結果と良く一致した。一方、接触角の測定は初めてのものであるが、低温では接触角はゼロに近く、約100 mKでは約10°、3重点に近づくにつれて増加する傾向にある。この接触角の温度依存性は臨界点に近づくときに見られpre-wetting現象とは著しく異なる振る舞いである。また、MRIを用いて、混合液の核磁化の空間不均一な回復の様子を可視化した。磁化の回復が試料容器壁から始まり、試料全体にスピン拡散で広がる様子を観測することに成功した。MRI測定ではこのように静的な分布だけではなく
 この開発成果を受けて、核断熱消磁冷凍機に組み込んでμK領域でのMRI測定を可能にする装置へと発展させた。2001年に世界で始めて超低温MRIを用いて核整列固体3Heの磁区構造の観測を行った。その後も開発を進め2005年には高解像度な3次元画像の撮影が可能になった。500μKという超低温度で撮影された世界一クールな画像をご覧頂きたい。超低温MRIを用いて磁区構造の研究の他に、超低温での相転移の時間空間発展の研究や、超流動3He中での結晶成長の研究などを行い、世界唯一の研究設備の威力を発揮して比類なき研究成果をあげている。今後は超流動3Heの織目構造やそのトポロジカルな欠陥等の超低温量子凝縮相で見られる磁気的空間構造の研究を進めていきたい。

(左)超低温MRIに使われる、核断熱消磁冷凍機。


超低温でNMR用の静磁場を360度回転できるヘルムホルツ型超伝導マグネット。

超低温MRIによって可視化された単結晶U2D2相中の磁区構造(2001)。 

3D-超低温MRIによって可視化された500μKでの5mm3の単結晶U2D2相中の磁区構造(2005)。 

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